
いぼ(尋常性疣贅) 水いぼ(伝染性軟属腫) 皮脂欠乏症
いぼ・水いぼは、カサカサの肌(皮脂欠乏症)があると、広がりやすくなります。対症療法は、ある程度有効ですが、皮脂欠乏症をそのままにしておくと、再発を繰り返します。細胞性免疫レベルを活性化すると、皮脂欠乏症は、改善します。いぼや水いぼは、いったん赤くなったのち、消える方向に向かいます。 |
・目次
いぼ | |
水いぼ | |
皮脂欠乏症 |
・いぼ(尋常性疣贅)

尋常性疣贅(いぼ)は、ご自分で、ただ物理的にカッターナイフなどで削るだけだと、一層、大きくなったり、まわりに広がったりします。
また、毛細血管がいぼの本体に入っていて、出血しやすいのも特徴の一つです。
尋常性疣贅は、免疫抑制薬を服用している方に多く認められます。
ご高齢の方の顔面に小さな角のような形で生えている場合もあります。
この場合、ご本人は、案外苦痛に感じていない場合も少なくありません。
これを触って、ご自身の他の部位やお孫さんなどに感染を広げることもあります。
いぼの存在に気づいた御家族の方は、受診をご本人に勧めて下さい。
50歳過ぎの方の手の甲(手背)には、扁平疣贅(平たい茶褐色をしたいぼ)がしばしば認められるようになります。
シミではありません。細胞性免疫が低下してきたことを示す重要なサインです。
イオウ入りサリチル酸ワセリンの塗布は、時間はややかかりますが、苦痛がほとんどありません。
塗布した後、バンドエイドなどで封入すると、次第に柔らかく白くなってとれていきます。
当院にて、処方しています。
冷凍凝固は、現在、実施していません。
また、足底の疣贅はスピール膏を使用して、柔らかくして削りとることもあります。
その後、再燃を防ぐため、しばらくの間、イオウ入りサリチル酸ワセリンを塗ることをお勧めしています。
大きく広がって治療に抵抗する尋常性疣贅(いぼ)は、抗がん剤の軟こうを使用することもあります。
いぼが扁平な形にひろがっている場合には、飲み薬(ヨクイニン)を併用するなどの工夫が必要になります。
陰部(外性器と肛門周囲)の尖圭(せんけい)コンジローマには、ベセルナクリームを処方します。
べセルナクリームの成分であるイミキモドが、コンジローマ局所の細胞性免疫を活性化させて、マクロファージやT細胞がコンジローマを攻撃するようになります。
細胞性免疫が低下していると、いぼは広がりやすくなります。
皮膚の感染防御力が弱いためです。
いぼの数が多かったり、繰り返したりする場合は、細胞性免疫を高めることををお勧めしています。

細胞性免疫が高まると、マクロファージやT細胞が、いぼの周囲に集まってきて、攻撃を始めます。
このため、いぼの周囲が赤くなり、かゆみも強くなります。やがて、いぼは縮小していきます。
細胞性免疫活性化につきましては、詳細な説明文書を予めお渡ししています。
納得・同意されて、ご署名された方のみ、接種の対象となります。
細胞性免疫活性化は、自費診療です。
☆ 2008年 ドイツのツアハウゼンは、粘膜に感染するタイプのHPVが、子宮頚癌の原因となることを遺伝子学的に解明した功績により、ノーベル賞を受賞しました。 この成果をもとに作成されたのが、子宮頚癌ワクチンです。HPV16,18などに対する抗体を予め獲得しておくことにより、これらの感染を予防する作戦です。 子宮頚癌は、特に生活環境の清潔化が進んだ国々において、若年層で増加している点が問題になっています。 子宮頚癌ワクチンは、世界中で使用されています。 この結果、このワクチンが普及している国々では、子宮頚癌が激減しています。 これに対し、日本では、痛みやしびれなどの有害事象(=因果関係は不明)が問題となって一時、接種が控えられました。※ 2022年から、再開されています。 HPV16,18自体は、抗原性が低い(=免疫原性が低い)ため、抗体価を高めるために添加されているアジュバンドが痛みを生じる原因となった可能性があると考えられます。 現代の特に都市部の日本人の細胞性免疫レベルは、滅多に感染症にかからないことにより、かなり低下しています。 生活環境の清潔化と若年層(20歳代、30歳代)における子宮頚癌の増加は、関連している可能性が高いと推測されます。 細胞性免疫を高めるタイプのワクチンを複数回使用していくと、皮膚においては、イボ(HPV感染巣)の周囲は、赤くなり、やがて脱落します。 抗体価を高める方法の実施が困難であれば、子宮頚癌ワクチンとは別のワクチンを用いて細胞性免疫レベルをしっかり高めることによって、子宮頸部に感染したHPVを攻撃し、排除できる可能性があるのではないかと推測されます。 一つの登頂ルートが困難になったとき、別の登頂ルートを開拓するのも一つの重要な選択肢です。 「急がば回れ」、です。 |
文献 Salem Pediatr Dermatol , 30, 60, 2013
・水いぼ(伝染性軟属腫)

水いぼに感染後、無治療でも、1-2年以内には、免疫が成立して自然消退します。
それまでの間は、増えたり、人にうつしてしまうことも少なくありません。
不用意にひっかくと、広がってしまいます。
中のウイルスの入った汁がまき散らされて、皮膚がただれたようになることもあります。
スイミングスクールに通っているお子さんは、肌と肌の触れ合いによって、感染する頻度が高くなります。
水いぼは、通常、10歳以上になるとみられなくなるのが普通です。
伝染性軟属腫に対して、イオウ+サリチル酸ワセリン軟膏が有効です(当院で処方いたします)。
お風呂上がりに、綿棒でこの混合軟膏を塗っていきます。
内容物にイオウが触れると、中のウイルスが不活化します。
しかし、ひっかいてしまっている傷に、サリチル酸軟膏をつけてしまうと大変痛みます。
この場合は、イオウ入りの保湿剤だけを塗るようにします。
爪をしっかり切って、ひっかかないようにご注意下さい。
大き目の水いぼは、スピール膏も有効です。1週間程度で、痛みなく、水いぼをとることができます。
なお、スピール膏を貼ると肌は赤くなります。はがしてしばらくたつと元の肌の色に戻ります。
水いぼをピンセットでつまみとる治療法は、当院では実施していません。
冷凍凝固法も、実施していません。
☆ イオウ+サリチル酸ワセリン軟膏を使用したホームケアは、細かいことが得意なお母さんに向いています。
つける人の器用さ、細かさ、熱心さが、そのまま治療効果に反映します。
直径1mm以下の水いぼが30個以上多発している場合は、皮脂欠乏症やアトピー性皮膚炎がベースにあることが少なくありません。
皮膚のバリア機能が落ちて(皮脂欠乏=皮膚がかさかさ)、細胞性免疫が不活性だと、小さめの水いぼが多発してしまいます。

水いぼの治療とともに、アトピー性皮膚炎の項にも記載したような複数のワクチンを使用して細胞性免疫を活性化することが効果的です。
細胞性免疫が高まると、マクロファージやT細胞が、水いぼの内部に侵入して、攻撃を始めます。
水いぼは、ふつうの肌の色からピンク色になります。ピンク色からルビーのように赤くなることもあります。
こうなると、水いぼは、自然につぶれていきます。
水いぼの色と細胞性免疫の関係: 肌の色=活性化していない、ピンク色=少し活性化している、赤色=活性化している、です。
細胞性免疫活性化につきましては、詳細な説明文書を予めお渡ししています。
納得・同意されて、ご署名された方のみ、接種の対象となります。
細胞性免疫活性化は、自費診療です。
皮脂欠乏症やアトピー性皮膚炎などのアレルギー性疾患がある場合、小児期のうちから、細胞性免疫を活性化しておくことが、大切なポイントです。

・皮脂欠乏症(ひしけつぼうしょう)

皮膚のあぶら分が不足していることを皮脂欠乏症といいます。肌は、かさかさした状態であり、保湿のため、クリームや保湿剤が常に必要となります。
皮脂欠乏症をそのまま放置しておくと、水いぼが多発したり、アトピー性皮膚炎に進展したり、とびひになりやすくなるなどの、肌のトラブルが大変多くなります。
これは、皮膚のバリア機能が低下しているため、ウイルス感染や、細菌感染の回数や重症度が増えることを示しています。
また、皮膚から、さまざまな抗原が侵入しやすくなるため、アレルギーを発症・進展してしまいます
これらの理由のため、皮脂欠乏症は、放置しないほうが良いのです。通常は、保湿剤が使用されますが、皮脂欠乏症がある限り、塗り続ける必要があります。
皮脂欠乏症には、亜鉛欠乏も関連します。高齢者において、亜鉛欠乏者は、経皮水分蒸散量(TEWL)が多くなります。それに対し、亜鉛補給を行うと、皮膚バリアがある程度回復して、経皮水分蒸散量が減ることが示されています(Deguchi, 2020)
☆ バリア機能の低下した皮膚から侵入した抗原を、敵と認識して攻撃するようになるのが、アレルギー疾患の始まりです。
経皮感作と呼ばれます。2008年、英国のラック博士によって提唱されました。
細胞性免疫を高めるタイプのワクチンを接種して、体質改善を図ることは、皮脂欠乏状態の改善にもつながると考えられます。
亜鉛補給と細胞性免疫活性化は、皮脂欠乏を改善する2本柱と考えられます。
特に、小児では、少ない本数のワクチン接種により、かさかさの肌から、しっとり、つやつやの良い肌に、 比較的短期間のうちに変化します。
☆ 最近の小児の多くは、驚くほど、肌がかさかさしています。
ご両親の肌に比較しても、格段にかさかさしています。
ご両親の成長期よりも、はるかに清潔な環境で育っている証拠です。
感染症にかかることなく、細胞性免疫が活性化されないまま成長するため、肌はかさかさのままです。
その驚くほど憂慮すべき現状(=病気の芽が放置されている)に、気づいていないご両親がほとんどです。
☆近年は、みんな肌は、かさかさしているので、比較してもご自分のお子さんの肌が、かさかさであることが認識できません。
なお、「かさかさ」は、正確には、皮脂分のないマット(=つや消し)な肌質のことです。
Th2優位の皮膚においては、フィラグリンの産生量が減るためかさかさします。
Th1(細胞性免疫)が高まると肌は、フィラグリンの産生量が増え、光沢をおび、しっとり、もっちりしてきます。
☆ 乳児に保湿をしっかり行うと、アトピー性皮膚炎に進展するのを防ぐ効果が示されています。
(国立成育医療センター 大矢ら 2014)。
一方、スウェーデンの研究では、乳児のアトピー性皮膚炎発症予防目的とした早期の保湿剤使用は、無効であったことが報告されています(Skjerven,
Lancet 2020).
昭和30年代以前の日本においては、赤ん坊は、ほったらかしにしても、誰もアトピー性皮膚炎になりませんでした。
赤ん坊が、様々な感染刺激に、日常的にさらされていたためです。
乳幼児に細胞性免疫を高める感染刺激が適切に加わると、皮膚はつやつやしてきます。
☆ 公費負担分のワクチン接種による細胞性免疫刺激だけでは、現代の日本(特に都市部)において、お子様の健康を守るのには十分ではないと考えれらます。
細胞性免疫活性化につきましては、詳細な説明文書を予めお渡ししています。
納得・同意されて、ご署名された方のみ、接種の対象となります。
細胞性免疫活性化は、自費診療です。
☆ 当院では、化粧水がわりのビーソフテンローション、ヒルドイドローションの処方(保険診療として)は、お断りしています。