
・更年期における関節症![]() 日本人女性の平均閉経年齢は、50歳です。 閉経に近づくと、生理周期が乱れたり、数か月おきになったりしてきます。 この時期あたりから、両手が、朝こわばる(=「朝のこわばり」といいます)ことを自覚することがあります。 関節リウマチを心配して、病院を受診される方も少なくありません。 手指などの関節の痛みを伴うこともあります(更年期関節痛)。 この場合、関節の腫脹(しゅちょう、はれること)は通常ありません。 Moglinoによると、更年期女性の半数が関節痛を自覚します(Maturitas, 67:29, 2010)。 これらは、閉経に伴って、急激に女性ホルモンが、体内から消失するために起こる症状です。 症状は、最初の半年間、最も強く、閉経後数年でじょじょに消えていくのが普通です。 同じような症状は、卵巣癌などのため、閉経前に両側の卵巣を取り除く手術を受けると急に現れる ことがあります。 乳がんに対し、ホルモン治療(アロマターゼ阻害薬)を行っても生ずることがあります。 また、出産直後から生理が戻る前の時期(=生理が停止している時期)に、この症状が現れることもあります。 朝のこわばりの実害は、握力が十分でていない間に、包丁やコップなどの物を取り落とすことです。 このため、自分の体はどうなってしまったのだろうと、精神的ショックを受ける人もいます。 ![]() この症状(=握力がでないこと)の対策は、グー、パーを繰り返すことです。 これにより、速やかに握力は、回復します。 女性ホルモンを補う治療(=女性ホルモン補充療法)を受けることも選択肢の一つです。 ![]() しかし、卵巣癌や乳がんの既往のある方は、女性ホルモン補充療法の適応にはなりません。 女性ホルモンを補う治療は、3つのタイプがあります。 1. サプリメント エクオール(エクエル®) 大豆に含まれるイソフラボン(ダイゼイン)が腸内細菌によって、女性ホルモン活性が高いエクオールという物質にかわります。サプリメントとして摂取できます。 エクオールを腸内で作れる方と作れない方がいます。 ソイチェックという検査により、腸内でエクオールを作れるか否か、検査することができます(自費)。 作れる方は、エクオールの原料となる大豆製品をこまめに摂取することが奨められます。 エクオールを作れない方は、エクオールのサプリメントの摂取が奨められます。 なお、大豆の中には、ゲニステイン、ダイゼイン、グリシステインという3種類の大豆イソフラボンが含まれてい ます。 これらは、そのままでもある程度の女性ホルモン活性を有しています。 女性ホルモン活性は、ゲニステイン>ダイゼイン>グリシステインの順です。 大豆製品をそのまま食べても、これらの大豆イソフラボンの女性ホルモン様活性は、ある程度期待できます。 大豆中の存在比は、ゲニステイン10、ダイゼイン5~6,グリシステイン1、です。 2. エストリオール 女性ホルモンを補う治療としては比較的マイルドです。 3. エストロゲン+黄体ホルモン 効果は、最も強力です。 5年以上の使用で、乳がんのリスクが上昇するとされ、以降の継続は、リスクとベネフィットを考慮して、検討されます。 このような知識を知っておくだけでも、更年期における関節症(更年期関節症)は、乗り越えられるのが普通です。 ![]() |

