アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎の軽快・完治を目指して、すずひろクリニックオリジナルの治療システムを構築しました。ほどほどの赤みは受け入れること、強い赤みは抑えること、ピーリングすること、免疫レベルを調節すること、などがポイントです。すでに多数の方が、軽快・完治を達成されています。 |
・目次
はじめに | |
アトピー性皮膚炎の合併症と対策 | |
自然軽快するメカニズムを利用した当院オリジナル治療システム | |
すずひろクリニック・オリジナル治療システム:2つのステップ | |
スキンケアの方法 | |
皮膚反応について | |
年齢別の反応と注意する点 | |
皮膚の赤み・かゆみが強いときの対応 | |
当院オリジナルの治療法を施行することが困難な方 | |
当院オリジナルの治療法により、治癒に至りやすい方(ご本人) | |
当院オリジナルの治療法を受ける際のキーパーソンの重要性について | |
細胞性免疫レベルの指標 | |
細胞性免疫が高まることにより皮膚反応が生ずることがある理由(推論) | |
おわりに | |
ご注意 |
・はじめに
薬剤については、保湿剤は、使用します。必要に応じて、ステロイド外用薬、プロトピック、 非ステロイド外用薬なども使用します。 一般的には、皮膚が赤くなると、ステロイド軟膏をつけることがしばしば行われています。 この方法では、一時的に落ち着いても、皮膚が赤くなることを繰り返すぐるぐるサイクルに入ってしまうことが少なくありません。 ☆ 標準的治療は、赤み・かゆみを消退させ、苦痛の一時的緩和には役立ちますが、完治を目的とした治療法 ではありません。 ----- アトピー性皮膚炎は、皮膚のバリア機能が低下して、皮膚におけるさまざまな細菌感染、ウイルス感染(これらを二次感染といいます)を起こしやすいという特徴があります。 アトピー性皮膚炎では、① 皮膚バリア機能の破綻に伴う細菌(黄色ブドウ球菌など)やウイルス(HPVなど)の慢性感染に伴う炎症 + ② アレルギー機序による皮膚炎 + ③ 掻破(引っ掻くこと)自体によって引き起こされる炎症 が、認められます。 (皮膚に感染するHPVの型は、HPV1,5,8,14,20,21,25,47です。) 1名のアトピー性皮膚炎患者から、15種類のHPVが検出されました(主にガンマ型とベータ型HPV)。 PLoS One. 19(4): e0297907, 2024 成人になるにつれ、多くの方は、膝の裏やひじなどに皮疹が限局(=軽症)していきます。 この自然治癒する傾向も、生活環境の清潔化が一層進むにつれ、あまり期待できなくなってきています。 このため、成人でも、なお、全身にアトピー性皮膚炎の症状が認められる方もおられます。 皮膚が角化し厚くなり(苔癬化)、ぼつぼつしたり、色素沈着を生じたり、様々なバリエーションが見られます。 HPVのアトピー性皮膚炎への関与は、マウスモデルでも示されています。 子宮頸部における子宮頚癌ハイリスクHPV陽性者は、陰性者に比較して、より高率にアトピー性皮膚炎を合併している(前者:8.3%、後者:4.5%)という報告があります。 オッズ比3.75倍。J Low Genit Tract Dis. 2015 19:345 皮膚にHPVが入りやすいことは、粘膜にもHPVが入りやすいことを示しています。 ☆ 何かアレルギーを生じる物を食べたから、アトピー性皮膚炎になっていく訳ではありません。 皮膚のバリア機能がない(=皮脂欠乏症)ことが、アトピー性皮膚炎発症の出発点です。 また、バリア機能のない皮膚から、様々な抗原がはいって、食物アレルギーなどを併発することもあります。 従って、「特定の食べ物を回避したら、アトピー性皮膚炎は良くなりますか?」というご質問の答えは、「いいえ」です。 ・アトピー性皮膚炎の合併症と対策1. アトピー性皮膚炎があると、小児の場合、水いぼが広がりやすくなります。 Type2サイトカイン(IL-4,IL-13)の産生亢進⇒ 皮膚のバリア機能が低下(フィラグリン・ロリクリン・インボルクリン・セラミドの産生低下)しているためと考えられます。 バリア機能の低下した皮膚に、伝染性軟属腫ウイルスが感染すると、「水いぼ」となります。 健常の小児に比較して、皮脂欠乏のある小児や、アトピー性皮膚炎のある小児は小さな水いぼがより多数認められます。 この場合は、「いぼ・水いぼ・皮脂欠乏症」のページで示す方法で対処します。 2. アトピー性皮膚炎の方の皮膚には、通常のいぼ(=「尋常性疣贅(ゆうぜい)」といいます)の合併感染(HPV感染の典型的な形)の頻度も増加します。 (尋常性疣贅に関連するHPVの型は、HPV2,27,57が多い)。 3. ヘルペスも全身に広がって重症化しやすくなります(カポジ水痘様発疹症)。 この場合には、抗ヘルペスウイルス薬の投与が必要になります。 痛みが強く生じます。 4. 細菌も入りやすくこのためとびひ(伝染性膿痂疹)も生じやすくなります。 皮膚のバリア機能低下(ディフェンシンの産生低下も関与)のためです。 膿痂疹の場合、顔などの皮膚の赤みが顕著に目立つようになることも少なくありません。 黄色ブドウ球菌は、アトピー性皮膚炎の90%に認められ、この疾患の悪化因子となっています。 当院では、対面にて、慢性細菌感染対策の方法をご説明しています。 爪はいつも短く切っておく必要があります。 5. アトピー性皮膚炎の方は、白内障や、網膜剥離の頻度が高いとされています。 痒みのため、瞼をこすることが原因とされています。 6. 喫煙している方は、必ず禁煙することが大切です。喫煙は、アトピー性皮膚炎の増悪因子です。 7. また、歯石がたまっている場合は、歯石除去が必要です。 歯周病もアトピー性皮膚炎の増悪因子となります。親知らず(智歯)の抜歯も必要です。 親知らずの周囲は、炎症を起こしやすい(=智歯周囲炎)です。 智歯周囲炎が生じると、アトピー性皮膚炎の炎症は、強くなります。 親知らずを抜歯すると、アトピー性皮膚炎における炎症の病勢が半分以下になることをしばしば観察しています。 喫煙は、歯周病も悪化させます。 喫煙や歯周病は、冠動脈疾患のリスクです。アトピー性皮膚炎自体も炎症が強く持続する場合は、冠動脈疾患のリスクになりえます。 禁煙と口腔ケア(=口の中をきれいに保つこと)は、アトピー性皮膚炎の治療の基本です。 当院では、アトピー性皮膚炎の方の口腔内は、必ず拝見させていただいています。 8. フィラグリンの遺伝子変異も、アトピー性皮膚炎の発症に重要な役割を果たしています。 フィラグリンは、皮膚の角化に必要なタンパクであり、分解されて、天然保湿因子となります。 日本においても、約20~30%のアトピー性皮膚炎の方が、フィラグリンの遺伝子変異を有しています。 皮膚のバリア機能の低下が、根底にあってアトピー性皮膚炎が発症してきます。その後、バリア機能の低下している皮膚から、ハウスダストなどの抗原が侵入することにより、アレルギーが発症してくると考えられます。 アトピー性皮膚炎の方は、遺伝子に変異がなくても、フィラグリンの量が減少しています。 タイプ2炎症のある皮膚においては、Th2細胞から分泌されるサイトカイン(IL-4やIL-13)が、皮膚の正常な分化を阻害し、フィラグリンの産生量が低下しています。 Th1を活性化していくと、活性化しすぎたTh2細胞の機能が押さえられていくとともに、フィラグリンの産生量が増え、肌はしっとりし、光沢があるようになります。 小児のアトピー性皮膚炎では、Th1細胞の低活性が示されています。 成人では、Th 22、Th 17、およびTh 1経路が関与しています。 ※ Th2活性化は、すべてのタイプのアトピー性皮膚炎の根底にあります。 |
・自然軽快するメカニズムを利用した当院オリジナル治療システムアトピー性皮膚炎は、成長とともに自然軽快・完治することがあります。 この自然軽快には、免疫系、特に細胞性免疫の活性化(type 1サイトカインを産生)が関与しています。 日本における生活環境は清潔化の一途をたどっています。 それと共に、細胞性免疫を高めるような感染症にかかる頻度が激減しており、アトピー性皮膚炎が自然軽快・完治する頻度は、残念ながら非常に減少しています。 当院では、難治性皮膚疾患であるアトピー性皮膚炎の軽快・完治を目指して、当院オリジナルの治療システムを構築してきました。 これは、アトピー性皮膚炎が自然軽快するメカニズムを利用しています。 また、ピーリングも組み合わせています。 すでに、多数の方が、軽快または完治を達成されています。 アトピー性皮膚炎が、自然軽快する際には、一時的に赤み・かゆみは強くなります。 当院オリジナルの治療システムにおいても、赤み・かゆみが、時折、出現したり、強くなることがあります。 その対策として、必要に応じて、適時・適切にステロイド軟膏を使用しています。 当院オリジナルの治療体系は、かなり複雑です。 また、コツをつかむのに時間と手間もかかります。 本人とご家族の方の、ご理解・努力の継続が非常に大切です。 当院を受診して、当院オリジナルの治療体系を受けてみたいとお考えの方は、まず、このサイトに記載内容を、 じっくり読んで理解しておくことを、治療を受けられる前提とさせていただきます。 ☆ご注意 現在の皮膚の状況より、少しでも、かゆみが強くなったり、赤みが強くなったりすることに 耐えられない方は、当院オリジナルのアトピー性皮膚炎に対する治療法はお勧めできません。 |
・すずひろクリニック・オリジナル治療システム:2つのステップ2つのステップからなります。 step1 イオウ入りの保湿剤、イオウ入りサリチル酸ワセリン等を使用して、ピーリングを行います。 角化しがさがさ、ざらざらして厚くなった皮膚が、ピーリングにより表面がなめらかになり、より薄くなっていきます。 この時期に、十分、厚くなり、がさがさした皮膚をピーリングしておくと、後述するstep2における皮膚反応の程度や持続時間を減らすことができます。 皮膚の赤み・かゆみが強くなったときには、 イオウ入りの保湿剤、イオウ入りサリチル酸ワセリンは 一時中止します。 代わりにステロイド軟膏を使用します。 外用薬剤は、通常の皮膚科診療に使用される薬剤を組み合わせて用いています。 年齢が低い方、角化があまり目立たない軽症の方は、step1を省略することもあります。 ☆ 硫黄泉(浴用)の温泉の泉質別適応症の一つに、「アトピー性皮膚炎」が記載されています (環境省のサイト)。 ☆ デュピクセント(抗IL-4/IL-13抗体)は、強い炎症がある程度長く続いてコントロールできない方に限定して使用しています。type 2サイトカインであるIL-4とIL-13の働きをブロックするモノクローナル抗体製剤です。適応があるか否かは、診察して判断させていただきます。 この薬剤は、皮膚の炎症を抑える効果は劇的といってよいほど優れています。残念ながら完治を目指す薬剤とはいえません。 効果が期待できるのは「使用している期間 + 寛解後の一定期間」です。 現在、①完治を目指すことが困難であり、②強い病勢がコントロールできない方には、デュピクセントの投与を行っています。 初回は、2本皮下注射します。2回目以降は、2週間ずつ間隔をあけて1本ずつ皮下注射します。やがて、自己注射に移行していきます。自己注射の行い方は、院内にて指導しています。 オルミエント、リンヴォック、サイバインコという経口薬も、病勢の強いアトピー性皮膚炎に、適応があります。これらについても、同様に考えています。適応がある場合に、処方しています。 step2 細胞性免疫活性化を図ります。アトピー性皮膚炎の残っている部位が赤くなり、ターンオーバーして、新しい皮膚に入れ替わっていきます。皮脂欠乏が改善して、皮膚がしっとりするようになっていきます。 step2に、進む際には、詳細な説明文書を予めお渡ししています。 納得・同意されて、ご署名された方のみ、step2に進むことができます。 |
縦軸 アトピー性皮膚炎を発症するオッズ比 横軸 乳・幼児期に何回、ワクチン接種を受けたか(受けた回数) 幼小児期に多くの回数のワクチン接種をうけた乳・幼児期ほど、アトピー性皮膚炎を発症するオッズ比は低下しています。 (なお、ワクチンには、抗体を高めるだけのタイプのワクチンと細胞性免疫を高めるタイプのワクチンが両方含まれています。)出典 Gru¨ ber Pediatrics 111:e282, 2003 ドイツ マウスのアトピー性皮膚炎において、BCG由来多糖・核酸投与が、疾患抑制効果を示した。 IgE↓ IL-12↑ IFN-γ↑ Wang Asia Pac J Trop Med 913, 2014 ※ 亜鉛の補給 アトピー性皮膚炎の軽減・治癒を目指す場合には、全経過(step1とstep2)において、亜鉛の補給が必須です。アトピー性皮膚炎は、亜鉛欠乏を生じやすい疾患です。血清亜鉛濃度の測定とその程度に応じて、亜鉛サプリメントの利用をお奨めしたり、ポラプレジンク、酢酸亜鉛などの処方を行っています。外用薬の中にも、亜鉛の混合軟膏を使用して、皮膚に対する亜鉛の補給を行っています。 アトピー性皮膚炎(特に外因性アトピー性皮膚炎)のある部位では、TEWL(経皮水分蒸散量)が高いです。水分のみならず、血漿に含まれる亜鉛も蒸散しやすくなるため、一層低亜鉛血症をきたしやすくなります。小児期から、重篤なアトピー性皮膚炎を生じている場合、亜鉛欠乏が重篤化しやすくなり、これによって低身長になる可能性が高まります。 アトピー性皮膚炎は、低年齢ほど、治りやすいため、この時期に適切にスキンケアをしながら自然治癒を誘導することが大切です。単なる対症療法のみに終止しないことが奨められます。。 |
・スキンケアの方法 |
・皮膚反応について当院オリジナルの治療法を実施中、急に皮膚が赤くなってくることがあります(皮膚反応)。 そのときは、イオウ外用薬を休みます。 ステロイド軟膏にて、皮膚の赤みを適度に抑えて下さい。 皮膚が赤くなったあと、皮膚が自然にむけるようになります。 それを繰り返すことによって、治る方向に向かっていきます。 急に皮膚が赤くなることは、治癒(完治)へと向かう兆候です。 赤くなることがおさまってから、イオウ外用薬をつけてください。 赤くなり始めたら、イオウ外用薬をつける間隔は、1週間に1回とか、4週間に1回程度に減らします。 つける時間も短くしてください。 イオウの入った外用剤により、皮膚のピーリングが進み、HPV等に感染した皮膚細胞がT細胞によってターゲットとして認識されやすくなったために自然に生ずると考えられます。 すなわち、細胞性免疫が活性化してきたために生ずる反応と捉えられます。 ステロイド軟膏や、シクロスポリン等によって、うまくその強さをコントロールする必要があります。 アトピー性皮膚炎の完治を目指す場合は、皮膚の色がほどほどの赤みになるように上手に調節することがポイントです。 ☆皮膚が赤くなる箇所は、イオウ外用薬を塗っていない箇所であることもありえます。 もともと潜在的にHPV等の感染のある箇所です。 あぶり出しのように思いがけない場所に赤みが出現することがありますので、予めご承知おきください。 外用療法(=外用薬のつけ方)については、詳細な手順を記した説明書に基づいて説明し、説明終了後に直接お渡ししています。 治療中、顔の赤みや全身の赤みが現れることがあります(=皮膚反応)。 これは、皮膚の中に乳頭腫ウイルス HPVがまだ残っている状態において、細胞性免疫が活性化するにつれて、これらの病原体を排除しようとする特異的細胞性免疫力も強くなるため、一時的に皮膚の赤みが強くなってしまうと考えられます。 時には、ジクジクしてくる場合も、汁(リンパ液)がでてくる場合もあります。 反応が、過剰に現れた場合にはステロイド薬(経口薬または外用薬)、または、シクロスポリンを使用して、炎症を鎮めます。 これらの薬剤を適切に使用すると、皮膚の赤み・かゆみは比較的短期間で抑えられます。 ※ ある程度落ち着いてきたら、シクロスポリンの量を、必要最小限に減らしていきます。 睡眠導入薬を使用することもあります。かゆみ止めの薬剤使用も強化します。 他のアレルギー疾患に対する体質改善を行っている過程では、見られない現象(一時的増悪)です あらかじめ、このような現象が一時的に現れることがあることを十分留意しておかないと、パニックになられたり、心理的に不安定になられる場合もあります。 びっくりして、治療を中断されることもあります。 このような現象があるため、ご家族の十分なご理解としっかりした心理的サポートも大変重要なものとなります。 ☆ 「皮膚反応」は、一般的な皮膚科学用語では、「自家感作性皮膚炎」あるいは、「アトピー性皮膚炎の増悪」という表現に相当します。 自家感作性とは、「自己の皮膚の抗原に反応している」という意味ですが、当院オリジナル治療法における皮膚反応の場合、正確には、「HPV等に感染した皮膚の細胞表面に発現したHPVなどの抗原」に反応しています。 ☆ 皮膚反応が広範囲に生じている最中(皮膚の赤みが強いとき)は、TARC値は高くなります。 皮膚反応がある場合は、「TARC値が高くなった=アトピー性皮膚炎が悪くなった」では、ありませんのでご留意お願いいたします。 皮膚反応が落ち着くとともに、TARC値は、低下していきます。 ※ 15歳以下の方のアトピー性皮膚炎の活動性指標として、SCCA2も使用されています。 この時期を過ぎると、肌は、正常の皮膚に向かっていきます。精神状態も落ち着いてきます。 このような強い皮膚反応が生ずることがあるため、受験期, 海外旅行、結婚式などの重要なイベントを3ヶ月以内に控えている、など、人生にとって重要な時期は、保存的で穏和な治療のみにとどめ、細胞性免疫の活性化は、控えることが望ましいです。 皮膚反応は、ステロイド外用薬、ステロイド内服薬(短期使用)、シクロスポリン内服(必要最小限の使用、頓用使用)等により、皮膚反応の強さ、赤みをコントロールしていきます。 強い皮膚反応が生じた場合は、稀に、学生は、一時的に、学校を休む必要がでてくることもあります。 お仕事をされている方は、稀に、一時的に休職する必要がある場合もあります。 通常は、薬剤により、その強さのコントロールは十分に可能です。 冷静にコントロールすることが必要です。 その対処法・コツは、診察時にお伝えします。 ☆ アトピー性皮膚炎の軽快・治癒を目指す場合には、このような「皮膚が赤くなる・かゆくなる⇒皮膚がむける」、ことを繰り返す過程が必ず生じます。 この過程を経て、少しずつ新しい良い皮膚に入れ替わって(=ターンオーバー)いきます。 |
・年齢別の反応と注意する点(1)0歳~9歳 最も早く改善します。皮膚に入っているHPVの量が少ないためと考えられます。 一時赤みが強くなることはあります。 この時期に治療を行うのが最も理想的です。 ご両親の十分なご理解と、前向きな姿勢が必要です。 現在の日本の都市部は清潔過ぎて、アトピー性皮膚炎の自然治癒を期待するのは、かなり困難です。 平均治療期間は、約1~2年です。 発達障害(おちつきのなさ、ADHD)を合併している場合には、それらの症状も、改善していくことが、しばしば認められます。 アレルギー疾患と発達障害は、清潔度の高い先進国に頻度が高い(=分布地域が同じ)ことから、細胞性免疫の活性化不足が、両者の成因に関与している可能性があると推測されます。 (2)10歳~19歳 改善は、比較的早い方です。受験を控えている場合には、施行する時期は、注意深く選ぶ必要があります。 思春期であり、ご自身が見た目を大変気にされる時期です。 また、本人がご両親に、きつくあたったり、反発しやすい時期です。 親子関係が良好であるほうが、治療は進みやすくなります。 平均治療期間は、約2年~3年です。 (3)20歳~29歳 皮膚の苔癬化が進んできます。まずは、治療に時間をしっかりかける必要があります。 結婚前の場合、見た目の改善が期待できますので、本治療法を受ける価値は大きいと考えられます (ただし、本治療法中の皮膚反応が強い時期は、一時的に見た目が悪くなることもあります)。 平均治療期間は、約3~4年です。 (4)30歳以降 皮膚の苔癬化が最も強くなっており、治療期間も最も長くなります (平均治療期間は、数年間です)。 ある程度の覚悟が必要となります。 「皮膚が赤くなる=アトピー性皮膚炎の悪化」という固定観念から離れなくなっている方の割合が多いのも、この年齢層の特徴です。 ステロイド軟膏を絶対に使いたくないという主張をされる方も少なくありません。 「ステロイド=悪」という固定観念から離れなくなっている方が多いです。 ステロイド軟膏を使用しない場合は、コレクチム軟膏やモイゼルト軟膏の選択肢もあります。 ☆ ここに記載してある平均治療期間は、あくまでも「目安」です。 「○○までに、治してほしい」、「○か月以内に治してほしい」と思い詰められておられる方は、当院以外の受診をお勧めします。 デュピクセントを使用して、皮膚の炎症を抑えるとともに、ピーリング(外用)を併用して、厚くなった皮膚を少しずつ削っていく手段を取ることも可能です。 |
・皮膚の赤み・かゆみが強いときの対応 |
☆ 本治療法において、カポジ水痘様発疹症を認める頻度は、100名中で4名程度です。 もともとヘルペスウイルスを体内にもっている方に発症することがほとんどです。 急に、水疱が多発したり、痛みが強くなった場合には、治療が必要ですので直ちにご来院ください。 (なお、本治療を行っていないアトピー性皮膚炎の方でも、カポジ水痘様発疹症を生ずることはあります。 本治療により、有意にその頻度が増加しているとはいえないレベルです。) なお、ご両親、とくに母親が口唇ヘルペスをときどき発症される場合、接触による感染のため、お子様が、ヘルペス感染症に罹りやすくなります。 |
☆ 皮膚の赤みが強く現れて、うまくコントロールできない場合は、すみやかにご来院下さい。 その症状・程度に応じて、スキンケアの方法を確認・修正し、対処の仕方をご説明します。 また、必要に応じ内服薬や外用薬の投与を行います。 なるべく平日にご来院お願いします。 土曜日は、混みますので、しっかりしたカウンセリングを行う時間がとりにくくなるためです。 また、その症状・程度に応じて、内服薬や外用薬の投与を行います。 なお、通常、本治療法のため通院間隔は、月1回が標準です。 しかし、症状が強い場合には、間隔を詰めた通院が必要になることもあります。 |
・当院オリジナルの治療法を施行することが困難な方(=行わない方が良い方)1. 喫煙をやめられない方 2. ご家族、配偶者など、御自分を支えてくれる方(キーパーソン)が、当院の方法を御理解されていない方、疑問を持たれている方 3. 精神的に不安定な方や抑うつ傾向の強い方: 皮膚が赤くなった場合、パニックになったり、悲観的な言動が多くなりがちになります。 キーパーソンの方が、もともと不安が強い場合も、同様の心理状態になられる場合があります。 4. ある程度落ち着いていた皮膚の状態から、一時的に、じくじくしたり、赤みが強くなったり、 かゆみが強くなったりすること(一時的増悪)に耐えられない方 5. 大学病院や大病院志向の方 「お試し」のお気持ちでは、当院オリジナルの治療法をお受けになるのは無理です。 6. ステロイド(飲み薬または外用薬)の使用を、絶対に同意できない方。 ☆ご注意 これらにあてはまる場合は、体質改善は行わず、アトピー性皮膚炎の標準治療を続けることをお勧めします。 楽な治療法ではありません(皮膚の赤みとかゆみは、一時的に強くなります)。 この意味において、誠に残念なことですが、当院オリジナルのアトピー性皮膚炎の治療法は、現在のところ、万人向けとはいえません。 |
・当院オリジナルの治療法により、治癒に至りやすい方(ご本人)
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・当院オリジナルの治療法を受ける際のキーパーソンの重要性について |
・細胞性免疫レベルの指標免疫系を調節するヘルパーT細胞には、細胞性免疫に関連するTh1細胞と、Th2細胞性炎症に関与するTh2細胞、Th17細胞、濾胞性T細胞、制御性T細胞などがあります。 アトピー性皮膚炎の病変部位の表皮角化細胞により産生されたTARC(タルク ケモカインの一つ)は、Th2細胞を局所に遊走させ、Th2優位の免疫応答を生じさせます。 このため、TARCは、アトピー性皮膚炎の重症レベルを判定する再現性に良い指標として用いられています。 (正常値 成人:450 pg/ml未満)。 Th2細胞活性化レベルに関連する指標として臨床応用されており、実際の臨床の現場でも用いられています。 アトピー性皮膚炎は、Th2細胞性炎症の一つととらえられます。 一方、アトピー性皮膚炎の方の細胞性免疫レベル(Th1細胞活性レベル)がどのくらい眠っているか、については、あまり良い指標がありません。 古典的なツベルクリン反応は、細胞性免疫の指標の一つであり、アトピー性皮膚炎の方では、その反応が48時間後、直径5mmにも満たないことがしばしば認められます(=細胞性免疫:熟睡レベル)。 Th1細胞からは、IL-2,IFN-γ、TNF-αなどが産生されます。 これらは、研究レベルで用いられる指標であっても、日常臨床において用いられる指標とは、今のところ、なっていません。 従って、ワクチン接種の前に、その方の細胞性免疫レベルを数値化して十分に把握しておくということは、日常臨床レベルでは、ツベルクリン反応以外には、現在のところ、あまりよい指標がないのが現状です。 (なお、結核菌に対するT細胞の反応性は、クオンティフェロン T-spotという方法で測定することもできます)。 同一量のワクチン接種を行っても、その反応性は、個人差が大きいのが普通です。 接種後の皮膚反応レベルが過大である場合には、ステロイド等を使用して、「火加減」を調節するのが実際的といえます。 アトピー性皮膚炎の方は、Th2細胞は活性化し、Th1細胞は眠っています。 このうち、Th1細胞が眠っていることの方が、より上流に位置すると思われます。 従って、Th1細胞を上手に活性化することは、この病気の本質的治療に直結すると考えられます。 |
・細胞性免疫が高まることにより皮膚反応が生ずることがある理由(推論)細胞性免疫が高まると、主として、成人アトピーでHPVの皮膚感染がある方において、皮膚が赤くなる皮膚反応が生ずることがある機序を推察してみます。 細胞性免疫が高まると、HPV感染部位周囲に、存在はしているが働いていないT細胞に活性化シグナルが伝わるため、と考えるのが最も妥当であろうと思われます。 赤くなった皮膚を詳細に観察すると、苔癬化してHPVが入っている部位だけが赤くなっており、健常な皮膚は、まったく変化がないためです。 これは、非特異的な免疫反応の活性化では、説明しにくく、HPV感染細胞に対する特異的T細胞が活性化して、細胞傷害を生じている証拠と思われます。 膀胱癌などのがんに対して、BCGを投与したり、細胞性免疫を高めるピシバニールを投与したりすることにより、がん細胞が傷害されるのも、がん細胞を取り囲んでいて、それらを特異的に認識するT細胞受容体を持っていても働いてないT細胞(アネルギー状態)に活性化シグナルが入ると考えるのが最も妥当性があると考えられます。 なお、膀胱がんには、HPVが関与するという報告もあります。がん特異的抗原よりも,HPV抗原に対する攻撃の方が、より比重が大きい可能性もあると考えられます。(粘膜に感染するHPVの型HPV6,11,16,18,31,33,35,39, 41,45,51,52,56,58,59,68,70です)。 皮膚科領域においても、尋常性疣贅(HPV感染の一つの形)に対して、ピシバニールの投与が、奏功したという論文もあります。 なお、粘膜に感染したHPVは、様々な部位で、がん化に関与します(子宮頚癌、膀胱がん、口腔粘膜がん、上咽頭がん、食道がん、肛門がんなど)。 細胞性免疫を高めるワクチンをタイミングよく接種することは、それらを効率よく排除することに寄与する可能性があると思われます(今のところ、実用化されているのは、膀胱粘膜がんに対するBCG位ですが、潜在的治療ポテンシャルは高いと考えられます。皮膚反応の観察からの推論です) この現象を、わかりやすく例えると、日本にAという国から不法侵入者が勝手に住み着いているとします。 自衛隊は、それらを不法侵入者と認識しているけれでも、攻撃命令がでていないため、普段は、監視活動にとどまっています(=攻撃していません)。 ここに、B国から、別の不法侵入者が入ってきました。首相から、防衛大臣を通じて攻撃命令がでて、B国からの不法侵入者への攻撃がはじまりました。 首相から、防衛大臣への攻撃シグナルは、同時に、A国からの不法侵入者に対しても、攻撃命令として伝わり、攻撃が開始されました。 このA国からの不法侵入者に対する攻撃が、皮膚反応として、認められている可能性(=オフターゲット効果)があると推論します。 |
・おわりに遠方の方は、2カ月に1回程度の通院も可能です。 さいたま新都心駅は、大宮駅から1駅です。新幹線の利用も可能です。 都内の方は、赤羽→さいたま新都心は、JR高崎線または宇都宮線でわずか20分です。 埼玉、東京都内のみならず、神奈川、茨城、千葉、栃木、群馬、山形、宮城、長野、静岡、広島、山口、愛媛、大阪等からもご来院なさっておられます。 |
・ご注意1. 現在の皮膚の状況より、少しでも、かゆみが強くなったり、赤みが強くなったりすることに耐えられない方は、当院オリジナルのアトピー性皮膚炎に対する治療法はお勧めできません。 楽な治療法ではありません(皮膚の赤みとかゆみは、一時的に強くなります)。 不安の強い方にもお勧めできません。 そのような方は、アトピー性皮膚炎に対する標準的治療を、どうぞお続け下さい。 2. 当院は、「脱ステロイド」派ではありません。 皮膚の赤み・かゆみが強いときには、適時・適切にステロイド軟膏を使用する方針としています。 プロトピック軟膏、コレクチム軟膏、モイゼルト軟膏等を使用して、ステロイド軟膏の使用量を減らすことは可能です。 ただし、まったくステロイドを使用しないことをご希望の場合には、そのような方針をとっている医療機関を受診されることをお奨めいたします。 |